
賛否両論あるラーメン、と言われたことのあるラーメン屋です。
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「賛否両論ありますね」
かつてネットでそう言われたことがあります。しかも、少なくない回数です。
一見、印象に残る言葉ですし、多少なりとも“尖った味”を提供していることの証明にも聞こえます。
でも、私はこの言い回しに、少し違和感を覚えるのです。
そもそも「賛否両論」とは、本来ある対象について肯定と否定、両極端の意見が共存している状態を指す言葉です。
つまり、対象に対して「とても好き」と「まったく好みじゃない」が、それぞれ明確に存在しているということ。
しかし、それは一人の人間の中に同時に存在する感情ではありません。
人はある物事を判断するとき、どちらかの立場に自分の軸を置くものです。
では、なぜ「賛否両論あるラーメン」などという言い回しが生まれるのでしょうか。
おそらく、そこには「第三者的視点」に立つ感覚があるのだと思います。
ネットの書き込みを読み、レビューを眺め、SNSや動画のコメントを見て、他人の意見を知った上で、
「このラーメン、賛否が分かれてるな」と評価する。
そういった自分の感覚ではなく、「世の中の反応」を評価軸にする姿勢が背景にあるのではないでしょうか。
そしてもう一つ、そういう言葉を使う人は、だいたい自分の立場を明言しません。
「自分は好き」または「自分には合わない」と素直に言えばよいものを、
どこか距離を取ったような、批評的な立場に身を置いている。
それが「賛否両論あるラーメン」という言葉の正体ではないかと、私は感じています。
でも、そんなふうに言われるということは、ある意味でラーメンとしての「強さ」や「意思」があるということだとも思います。
誰にも嫌われない味を目指せば、同時に誰にも強く記憶されない味にもなりかねません。
それよりは、「好きな人には刺さる」「でも、合わない人もいる」——そういう個性のあるラーメンのほうが、作り手としては手応えを感じますし、何より「自分が美味しいと本気で思うラーメン」を提供している実感があります。
なので、大海軒はこれからも、万人受けはしなくても(一人でも多くの方に好きになってほしい、という気持ちはあります!)、「この一杯をずっと食べ続けたい」と言ってくださる方に向けて、誠実にラーメンを作っていきます。
はい、賛否両論あるラーメン屋です。でも、自分たちは自信を持って、そう言えます。